
老後にみんなどのように生活しているのでしょうか?
こんなお悩みを解決します。 私は理学療法士というリハビリ職で、老人保健施設で働いています。 老人保健施設は介護を必要とする高齢者の自立を支援し、在宅復帰や在宅療養支援などを行うための施設です。 したがって、老後の生活の実態の一部分をよく知っています。 老後の生活の分かれ道は、介護が必要になるかならないかです。 介護にも2つの面があり、体が元気で自分で歩ける状態でも認知症になると介護が必要になります。 逆に、頭が元気で認知症でなくても、体が不自由で身の回りのことができないと介護が必要になります。 介護が必要になった時、ほとんどの家族さんは老人保健施設や有料老人ホームに預けられます。 大抵の方は、老後と言えば有料老人ホームを意識する方が多いと思いますが、有料はすぐには入れない場合が多く、空きが出るまで待たなければなりません。 そして、その空きがでるまでに老人保健施設に預けられる家族さんが多かったりします。 意外と知られてないのですが、老人保健施設は割と安いです。 また、特別養護老人ホームなどは順番待ちがありますが老人保健施設は簡単に入ることが多いです。 ここでは老人保健施設ならそんなにお金はかからないし、そこでの生活もそこまで悪くないよ?というお話をしたいと思います。 ※ちなみにこういった施設にはいるには、要介護認定を受けて介護度がつかないと入れません。
目次
老人保健施設でかかるお金


老人保健施設は、在宅復帰の割合で、超強化型、在宅強化型、加算型、基本型、その他と分かれています。
超強化型が一番在宅復帰がよく、手厚いリハビリ(週3回の個別リハビリ)を受けられます。
超強化型が一番いいじゃないかと思われるかもしれませんが、一番値段が高いです。
どれだけ違うかというと、要介護度にもよりますが基本型と在宅強化型と比べて1日100~150円違います。月換算すると3000~4500円の違いです。
そんなに違いないじゃんと思われるかもしれませんが、介護保険で1割負担なので安く感じるだけで実質1日1000円~1500円月換算すると30000~45000円違うということになります。


私の施設は基本型ですが、大体1割負担でこれぐらいの値段です。 これにさらに他の加算や諸経費がかかってくるので、1~2万円増えます。 多床室で個室でないならば大体8~10万前後と考えてもらえれば大丈夫です。



結構安い値段ではいれるんだねぇ!


上の表にある通り、年金に40年加入したとして国民年金64,941円+平均給与30万で計算すると厚生年金65,772円で130,713円。 現状(2022年)では年金で余裕で老人保健施設に入ることができます。 入ってしまえば、どれだけ体が動かなくてもすべて介護してもらえ、衣食住すべて安心して暮らすことができます。
老後の生活の実態。老人保健施設での生活


衣食住が保障され安心出来たら、次に人が求めるものは生活の質です。 老人保健施設に入ってしまうと施設の中ですから、自由に外出したりできません。 ある程度自由が制限されることを覚悟した方がいいです。 しかし、どちらにしろ高齢になればなるほど体の自由がきかなくなり、車にも乗れず、活動の範囲は確実に減ります。 自分らしく生きたいと思っていても、65歳以上の約16%が認知症であり、80歳代の後半であれば男性の35%、女性の44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84%が認知症です。 自分は大丈夫と思っていても半分は認知症になってしまいます。 それならば、笑って最後まで安心して暮らせる老人保健施設の生活も悪くないのではないでしょうか。
老人保健施設での生活の良いところ
- 介護さんが世話を焼いてくれるし、話し相手になってくれる
- 孤独にならずに、他の利用者さんとお話しできる
- リハビリを受けることで、体力をある程度維持できる
- レクレーションなどの出し物がある
- 集団リハビリでみなさんと楽しくゲームをしながら、リハビリができる
- 転倒してもすぐに助けてもらえる
- 薬の管理をしてもらえる
- 日常生活でできないことがあっても、介護さんに助けてもらえる
- お風呂にいれてもらえる(ただし、週2回)
- 亡くなったとしても、遺体が放置されることがない
老人保健施設のでの生活の悪いところ
- 食べるものが制限されることがある(おやつでコーヒーやデザートなどはもらえる)
- お風呂が1週間に2回しか入れない
- 飲み込む力が弱いと、原形がなくなるまでミキサーで細かくされる
- 重度の認知症との人とも付き合っていかなければならない
- 介護さんの中には意地悪な人もいる
- 一日声を出すなどの不穏な人がいるとストレスがたまる
- 4人部屋が多いので、いびきや夜の間中独語がある人がいると寝れない
- 外出できるのは病院に受診するときぐらい
- レクレーションやリハビリがないとすることがない(TVをみるぐらい)
- 認知症の方とはまともに会話することができず会話が続かない
- 我儘なきちがいが入ってくると生活が一変する
老人保健施設だけでなく、老人ホーム全体にいえることですが、入所者の質によって生活は一変してしまうことがあります。 たまに認知症だけが原因でない元々の性格でとても我儘な入所者が入ってくる場合があります。 介護では振り回され、怒鳴り散らし、他の利用者にも暴言暴力でやりたい放題です。 共同生活なので仕方ないのですが、とてもじゃないけれど耐えられないところがあります。 どれだけ施設の情報をもらおうと既に入所している入所者のことまで話してもらえません。 しかも、今はコロナ下なので見学もできません。 利用者の口コミとは投稿できないので、運としかいえないところがどうしようもならないところです。 理想はやはり入所せずに自分の家族に世話してもらえることでしょうが、今の世の中無理でしょう。 私も親には本格的に介護が必要となったら施設に入ってくれるように言ってあります。 働きながら介護するのはとてもじゃないとできません。 自分のことは自分でやり、今後の生活については自分で考えていかなければいけません。 自由に生活していきたいのならば家族に頼るのではなく、自分で自分の将来設計が必要になります。 かといって、デイサービスやデイケア、訪問看護などの在宅サービスを利用することによって自分が仕事をしていても親の介護の負担を減らすことはできます。 料金も圧倒的に安く済みますので要支援や要介護度がついている場合は積極的に利用しましょう。(※介護度によって限度額はあります)
1日の暮らしはどんな感じ?


私の施設での1日です。
起きる時間は人それぞれですが大体7時ごろには起きている印象を受けます。
その後、朝食を取り、10時ごろから入浴が始まります(週2回のため、ない日もある)
午前中は寝ているか、TVをみているか、新聞を読んでいるか、色塗りをしているかで人によってまちまちです。
昼食を食べた後は、たまにレクリエーションがあったりします。(主にカラオケ)
15時ぐらいにおやつがでて、コーヒーとお茶菓子をおいしそうに食べています。
一週間の内、午前中と午後のどちらかに一回20分の個別リハビリと集団リハビリが1回ずつあります。
その後は、夕食を食べ、20時ぐらいまで自由に過ごして、就寝です。
特に室内でできる趣味がなければ、1日何もせずに過ごす時間が長いです。
暇より苦痛なモノはありません。
今のうちに、室内でできる趣味を何かしら作っておくと、1日退屈せず楽しく過ごせると思います。
私ならどうする?


私が老人保健施設で一番嫌だと思うところは、やはり外出できないところとお風呂に週2回しか入れないところです。 そんなに出掛ける方ではないですが、朝の散歩だけは日課として続けています。
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老人保健施設で生活が全然違う


私は今の老人保健施設と合わせると2つ老人保健施設に勤めていました。 勘違いされると困るのですが、超強化型といってよいリハビリ、よい介護が受けられるとは限りません。 その施設を形作っている雰囲気、ルール、人間などによって、施設によっては良いところもあれば悪いところもあります。 お金だけ稼げればいいと、待遇が雑になったり、書類だけ作成してお金だけ取るといった形になりやすいです。 最初に入った老人保健施設はそうでした。 在宅強化型でしたが、医師、看護、介護、リハビリ、ケアマネ、支援相談員、管理栄養士などのチーム間での連携もほとんどありませんでした。 各部署が自分の仕事だけやっており、お金だけ稼ぐことに一生懸命になっていたと思います。 利用者さんからの苦情も多く、まったく自由度はありませんでした。 とにかく「死にたい」と言っている利用者さんが多かったです。



利用者さんに「死にたい」とか言われると本当につらかったです。
今、働いている老健はそんなことありません。 ケアマネがしっかりしていることもあって、ケアプランにのっとり、各部署が協力して看護、介護、リハにあたっています。 また、ご飯前の集団体操、集団レクレーション、集団リハビリと、集団で行い、みんなで楽しんでいるところが印象的です。 ただ今のところでも何もすることなく、ぼーと壁を見ている姿をみると「人生の最後が壁を見て過ごすなんて嫌だな」と思ってしまいます。 レクリエーションは充実している方だとは思いますが、介護の仕事があるので常にあるわけではありません。 やはり理想は、デイケア(リハビリ付き)に通いつつ自宅でなるべく生活し健康寿命の伸ばせるようにするべきでしょう。 自分だけは大丈夫と思わずに、今から運動をメインにしっかり対策していきましょう。
施設によっては長期入所できる


超強化型だと先ほど述べたように3カ月で退所するように最初に忠告されます。 そうしないと、採算が合わないからです。 たくさんリハビリをして、たくさん入所の人から加算(別途に書類を作ることでお金がもらえる)を取り、在宅復帰率を高くすれば、国から多くのお金がもらえます。 超強化型は病院や介護施設と連携しているため、ベッドの回転率が良く、入所の定員割れを起こすことはあまりありません。 しかし、基本型の施設は提携先が少なく入所があまりないため、すぐに退所させてしまうと、ベッドの回転率が悪くなり、赤字になってしまいます。 基本型は最低人数で仕事を回し、支出を少なくして、利用者から基本料金だけを取り、採算を合わせています。 つまり、自宅復帰させずに、利用者さんに長期間滞在してくれた方が経営が成り立ちます。 したがって、基本型に近い、加算型、その他はそういった傾向が強いので、長期入所を望むのであれば入所時に確認するのがおすすめです。
老後の生活は老人保健施設でも悪くない?


老後は年金だけでは食べていけず、みじめな暮らしをしなければいけないと思ってる方が多いと思います。 しかし、老後の生活の選択肢の1つとして、老人保健施設での生活も悪くないと私は思っています。 お金があったとしても、車が運転できなくなると、外出する機会も減り、部屋で一人孤独に生活しなければなりません。 活動範囲が狭くなれば、自然と1日TVを見て過ごすか畑仕事をして過ごすかぐらししかすることがないのではないでしょうか。 デイケアでリハビリにしにくる人達は一日何をしているの?と聞くと、大抵何もしてないと答えます。 (今、趣味がない人でも必ず趣味を作っておきましょう。人生の後半は趣味があるかないかで全然変わってきます) じゃ家にいても老人保健施設で生活してもかわらないじゃんと思ってしまいます。 収入が少なく、将来年金額が少なくても月12万あれば、老人保健施設に入れます。 完全寝たきりの人は除いて、ある程度自分で動ける方は楽しそうに過ごされていらっしゃいます。 認知症の相手をするのが嫌だと思っていても、自分が認知症になります。 第2の生活の場として、検討してみてください。 最後に、施設によって全然過ごしやすさが違いますので、しっかり相談員の方に相談して聞いてください。



一人で死んでいくよりは、周りに誰かいたほうが安心できますね
最後まで自分らしく暮らすためには認知症にならないことが一番肝要です。 皆さん自分だけは認知症にならないと思うかもしれませんが、少しでも対策をしておかないとなります。 認知症になると今までできていたことができないだけでなく、最悪言葉を失います。 油断していると70歳でも認知症です。 認知症を少しでも予防したいと思う方は下記の記事を参考にしてください。
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