理学療法士として長年働いていれば、大変だと思うことはいくつかでてきます。 それによって仕事が辛かったり、辞めたいと思ったりとすることもありますが、苦難というものは自分を成長させてくれたりもします。 多分皆さんも悩みながらも、仕事を続け、自分の心の葛藤を押さえつけていると思います。 もちろん肉体や精神に限界がこれば「退職」の二文字が頭をよぎりますが、転職するにしても膨大なエネルギーが必要なので簡単に職場を変えるわけにもいきません。 また、理学療法士自体を辞めるにしても理学療法士になるために膨大な時間とお金がかかっている以上簡単にやめるわけにもいきません。 自分で決めた道である以上、理学療法士が大変だと分かっていても乗り越えなければいけないのです。 では理学療法士で大変なことは何なのかどのように対処していったらいいのかここではそれについて詳しく解説していきます。
目次
理学療法士で大変なことには何がある?
肉体労働である

医療職は専門的が学校を卒業しているので知的なイメージが強いですが、はっきりいって肉体労働が圧倒的に多いです。
もちろんデスクワークもありますが、リハビリというのはほとんどが肉体労働になります。
どれぐらい大変かと言えば、私の友達が働いている病院では7時間ずっとリハビリをしているそうです。
もちろん病院や施設によってリハビリの時間は変わりますが、私の職場でも4時間ほどはずっとリハビリの時間です。
理学療法士は患者さんに運動してもらうのだから疲れないイメージがありますが、立ち上がりさせたり、移乗させたりと介助が必要な場合は完全に肉体労働になります。
人の体重は高齢者であっても40~50kgはあります。全介助ともなれば、40~50kgを持ち上げる必要があります。
患者さんの介助を続けていると、疲れるだけでなく腰痛の原因になったります。
したがって、体力がないもしくは高齢になればなるほど続けるのが難しい仕事になります。
治療効果がでないと泣きそうになる

リハビリは必ずしも効果がでるわけではありません。
リハビリの9割は意味がないモノといってもいいでしょう。
実際に治療効果を出し、患者さんから必要とされている療法士はごく一部だと思います。
もちろん手を抜いているつもりもなく、一生懸命リハビリをしていますが、自分の経験や知識が足りず上手くいかないことの方が多いです。
リハビリをしても効果が出ないと、途轍もなく無力感を感じてしまいます。自分を情けなくと思ってしまいます。
患者さんからの「ありがとう」は自分にとって治療効果がはっきりでて意味があるのです。
理学療法士は毎日悩みの連続です。決して精神的にも肉体的にもラクな仕事ではありません。
手を抜こうと思えばいくらでも抜けますが、何のために理学療法士になったのか分からなくなってしまい、自分を見失う結果になります。
一生勉強は続く

理学療法士の勉強は国家試験が終われば終わるわけではなく就職した後も一生続きます。 もちろん、就職した後は勉強してもしなくても一定額の給料はもらえるため、給料面で考えた場合「勉強する必要がない」と言わればその通りです。 誰にも勉強することは強要されませんし、職場も理学療法士の腕に関しては別に求めてこないので淡々と仕事ができます。 結局勉強するかしないかは自分自身の問題です。 あなた自身が「そのままでいいのか」ということです。 経験だけではどうしても限界があり、勉強しなければ患者さんもよくすることはできません。 勉強したからといって必ずしも治療効果が上がるわけではないですが、勉強しなければ治療効果が上がらない事だけは確かです。 20代で理学療法士になれば、その後他の職種に転職しようと思わなければ40年間理学療法士の仕事が続きます。 10年、20年先に「自分は今まで何をしてきたのだろう」と思う時がきます。 人は常に「生きる意味」を考える生き物だからです。 ダラダラ仕事をして一生を終えるのか、自分は仕事をやり切ったと言って死んでいくのか。 決めるのはあなた自身です。
誰もが悩む人間関係

仕事と言うのは人との関わり合いである以上、必ず人間関係の悩みはつきものです。 私は人間関係の悪化が原因で一度転職しています。 それぐらい人間関係の悩みというのは辛く、苦しく、職場にいられなくなるほどの悩みなのです。 特に理学療法士は同僚だけでなく、患者さんともコミュニケーションをしていかなければいけません。 自分を救ってくれるのは患者さんですが、自分を地獄に突き落とすのも患者さんです。 人間関係というものは『慣れ』としかいいようがありません。思い悩み、何がいけなかったのか考えることでより良い人間関係を築けるようになります。 転職し、人間関係に恵まれた私でしたが良い人たちに囲まれても、人間である以上、結局は人間関係で悩みます。 パワハラ、セクハラだけでなく人には嫉妬心というものもあるので、職場で孤立感を感じてしまえば、何も言われていなくても毎日が辛くなります。 人間関係は誰もが通る道なので、自分なりに考えながら解決していくしかありません。
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あくまでチーム医療である

理学療法士の仕事は1人で勝手にやっているわけではなく、他の医療従事者の協力のもとリハビリをしています。
リハビリをする時間は短いですが、1日患者さんを世話するのは他の医療従事者です。
リハビリで日常生活動作ができているので、患者さんが日常生活でできることを増やしたくても他の医療従事者の負担になる場合意見が通らず介護を拒否られる場合があります。
療法士からいえば「患者さんのことを全然考えていない」と怒りたくなるかもですが、毎日ご飯を食べさせ、おむつ交換をし、愚痴を聞いているのは他の医療従事者なのです。
その苦労を知らずにこちらの意見を通すのはお門違いです。
あくまでこちらはお願いする立場であり、意見が通らなくても他の医療従事者の気持ちを鑑みる必要があります。
理学療法士にとって、他の医療従事者と足並みを揃えることは大変だと思うことは多々ありますが、自分にできないことをしてもらっているので感謝しつつお願いしていくしかないと思います。
患者さんのニーズと家族さんのニーズで板挟み

私たち理学療法士はあくまでサービス業であるため、お客様である患者さんやご家族さんのリハビリの希望を聞く必要があります。 お金をいただいているわけですから、自分の好き勝手にリハビリできるわけではありません。 しかし、一番問題なのが患者さんと家族さんとで意見が食い違うことです。 私は老人保健施設で働いています。 老人保健施設は建前としては『在宅復帰』を目的にしている施設です。 建前というのは、入所希望される家族さんは長期入所で患者さんを預かってほしいだけの場合が多く、「家に帰ってきてほしくない」のが本音だからです。
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当然ここで、患者さんは「少しでも早く家に帰りたい」とおっしゃられ、家族さんは「少しでも施設に預かってほしい」とおっしゃられるので意見が食い違い入所時に患者さんと家族さんとで喧嘩しながらこられる場合もあります。
療法士がどちらの希望を優先するかといえば、やはり介護する家族さんの方を優先してしまいます。
患者さんのニーズにそえないことは心苦しいですが、少しでも施設生活を楽しいモノにするために私たちは努力しかできません。
理学療法士で大変なことへの対処法
「肉体労働である」の対処法

理学療法士には色々な職場があります。
病院や施設、デイケア、訪問リハビリ、放課後デイサービス、自費リハなど働ける場所はいくらでもあります。
理学療法士の肉体的な大変さは、すべてリハビリの単位数で決まってしまいます。
リハビリの単位数は職場次第としかいいようがありません。
私は41歳と中年であるため体力は若い頃に比べ、衰えています。
したがって、長時間の肉体労働は難しいため、比較的にリハビリの単位数が少ない職場に就職しました。
私が働いている職場は、老人保健施設ですが、1日の単位数が10~12(200分~240分)とかなりラクをさせていただいています。
年齢的にリハビリと言う肉体労働に限界が来ている方は、転職をし、体がラクなところに就職しなおしてもいいのではないでしょうか?
「ラク=怠ける」というわけではありません。自分の体力に合わせて、自分が頑張れるところを変えるだけの話です。
詳しくは下記の記事で詳しく解説しています。
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「治療効果がでないと泣きそうになる」の対処法

「治療効果がでないと泣きそうになる」の対処法は単純です。
ひたすら勉強し、たくさんの患者さんを診て、トライ&エラーを繰り返すことです。
方法論は単純ではありますが、簡単に実力がつくことはありません。
今の人達はすぐに結果を求めすぎます。簡単に得られるような実力ならそもそも価値はありません。
誰もが到達できないからこそ、オンリーワンになれるのです。
何も考えずに毎日同じことの繰り返しでは、10年先でも同じことで悩んでいます。
リハビリをするにあたって、仮説と検証は必ず必要です。
泣いている暇があったら、1日中患者さんのことを考えるなりして、何がいけなかったのか考えていきましょう。
「一生勉強は続く」の処方箋

勉強が一生続くと分かっているならば少しでも勉強を楽しんでやるのが苦なく長く続けるコツです。
私は最初は専門書で勉強していましたが、情報量が多すぎることとハンドリングが写真では分かりにくかったので、途中から動画学習に変えました。
動画学習の良いところは、要点だけまとめられているので情報量が少なく、体系的に学ぶことができ、さらに実際の実技動画を観れるところです。
また、先生方一人一人に特徴があり、面白いので飽きることなく学ぶことができます。
私の学習方法としては、「動画で学ぶ⇒気に入ったらその先生の著者の専門書を読む」で掘り下げて勉強しています。
日々の仕事に加えて、毎日勉強することは家庭を持っていればなおのこと難しいでしょう。
私はお風呂にiPadを持って行って、湯船につかりながら30分ほど動画を観ています。
iPadは防水性はないので、壊れる可能性が十分ありますが、勉強しないことの方が人生にとって損失だと思って、半ばiPadはあきらめています。
あくまで一例ですが、1日の中で30分でいいので勉強する時間を作り出してください。
必ずこの時間に勉強すると決めることが大切です。
勉強のモチベーションが上がらない人は下記の記事を参考にしてみてください。
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「誰もが悩む人間関係」の対処法

人間関係で悩む人のほとんどは、「人に認められたい」「褒められたい」という欲を多く抱えています。だから、その欲が満たされないと、途端に「上司にないがしろにされた」「パワハラだ」となる。要は、自分の中に「ほめられてトクしたい」という卑しい心があるから、それが果たされないと不満を持つのです。
成功に価値は無い!
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人間関係のほとんどは、自己に固執しすぎるところから始まると思っています。
患者さんや同僚が大事なのではなく、自分が大事で自分が満足できないから「不満だ。私を満足させてくれない、お前が悪い。」という感情に陥ります。
自分に固執すればするほど、他者の言動が気になり始め、何をしてくれても不満を覚えるようになります。
しかし、逆にあなたは他者のために何かをしてあげているのでしょうか?
求めるばかりで他者に何も貢献する気のないあなたは他者の優しさを貪っているだけで、自己中心的な人間です。
人間関係で悩みのほとんどは、他者にではなく自分にあるわけです。
それを考えない限りはどこに転職して職場を変えようが結局は同じ結果に終わるでしょう。
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「あくまでチーム医療である」への対処法

他の職種とうまくやるには、とにかく『恩を売る』ことです。
他の職種の人から頼まれたときは快く承諾し、良い関係を築いておきましょう。
特に気持ちの良い朝の挨拶を行えると印象が全然違ってきます。
普段から良い関係を築けていると、カンファなどで自分の意見が通りやすくなります。
もちろんカンファのときも相手の意見を否定せず、あくまでお願いする立場であることを自覚して取り組みましょう。
相手と意見が合わないからとか言って、「患者さんのことを考えていない」と思うのはご法度です。
自分が逆の立場に置かれたらどうなのかしっかり考えてみてください。
「患者さんのニーズと家族さんのニーズで板挟み」の対処法

私としては、家族さんのニーズを優先させています。
なぜならば、患者さんが家に戻ったときに介護をするのは家族さんだからです。
家族さんが首を縦に振らない限りは自宅復帰はかないません。
リハビリは、家族さんの介護負担を少しでも減らせる方向に持っていきます。
認知症などでどうやっても長期入所しかありえない場合は、少しでも患者さんがここでの生活を楽しんでもらい「家に帰りたくない」と逆に思ってもらえるようにリハビリを楽しむ方向にもっていきます。
リハビリは、その人に合ったリハビリ内容に変え、体を動かすだけというリハビリは極力避けるようにしています。
理学療法士が考える運動プログラムは全然楽しくありません。
おしゃべりが好きで、理学療法士との会話を楽しみにしてくれている場合はいいですが、運動ばかりしているとリハビリ拒否になる場合があるので、塗り絵をしたり、計算ドリルをしたり、工作をしたりと色々工夫をしています。
もちろん運動をしないわけではありませんが、運動して休憩がてら自分の好きなこともやるという風に患者さんのニーズに合ったリハビリを提供しています。
理学療法士で大変なことまとめ

人生山あり谷あり、理学療法士の仕事にも山あり谷ありです。 精神状態は良いときもあれば悪いときもあり、仕事のほとんどが自分の思うようにはなりません。 それでも理学療法士としてやっていくには、自分なりの心の中に一本の芯が必要です。 あなたが理学療法士を続ける理由、あなたが理学療法士を続けたい理由は考えていないだけで心の中にはきっとあると思います。 私の場合は老人保健施設に勤めており入所者も同僚も家族も同然なので、自分の大切な人のために働いています。 自分にとって大切なことが分かっていないと、肉体と精神に限界がきたときに壊れてしまいます。 それぐらい人は傷つきやすく脆い存在です。
幸福はそれに気がつかなければならないものです。ですから、幸福に気づかない人には幸福はないのです。
現代の考察
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理学療法士は誰もが患者のためにしてあげていると思っているかもしれませんが、患者さんからしてもらっていることも多いことに気付いているでしょうか。
患者さんの何気ない会話に救われたり、笑って「ありがとう」と言ってくれるだけで心が安らいだりした経験は誰もがあるでしょう。
そういったことに気付くことが理学療法士をやっていく上で大切なことだと私は思っています。